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Chapter1:ラグランパンチ アニメ:キルラキルで行われた文字表現

《ラグランパンチ》は、フォントワークスのCATCH(キャッチシリーズ)の書体です。個性的でユニークな力強さをもっている書体で、書籍はもちろんアニメやテレビのテロップなど、非常に多くの媒体で使用されている書体です。
特にこの書体を効果的にご使用いただいたアニメ「キルラキル」(2013年10月〜2014年3月まで放送)という作品では、その文字表現におけるインパクトは絶大でした。
今回は、ラグランパンチにスポットをあて、その開発やこの書体の特徴を、アニメ「キルラキル」での使用方法などを事例にご紹介します。
また、本作の今石監督からは、この記事を作成するにあたって、「アニメ作品における書体の役割について思うこと」のコメントをいただき、ご協力いただきました。

制作協力:©TRIGGER・中島かずき/キルラキル製作委員会

ラグランパンチ開発の経緯 ー「ラグラン」を時代にあわせてリファインし誕生

「ラグランパンチ-UB」は、「ラグラン-UB」をリファインした書体です。 

「ラグラン-UB」は、1995年に誕生しました。 
当時、フォントメーカー各社からリリースされていた、いわゆるディスプレイ系のデザイン書体の種類は、今ほど豊富ではありませんでした。
その時代に、他社にはない極太のディスプレイ書体としてリリースし、そのインパクトのあるデザイン性が好まれ、チラシやカタログなどで、よくご使用いただいておりました。

当時のフォントは、紙メディア(印刷)でお使いいただくことを主な目的としていましたが、電子看板の登場やテレビの地デジ化などによるモニタやディスプレイ表示などのデジタルメディアでもそのニーズが高まってきました。 特にテレビテロップが、字幕的に単に情報を文字で伝えるだけのものから、“情景”や“感情”などを表現するような形で演出的に使用されるようになり、さらにはアニメやゲームなどでも個性的なフォントが多く使用されるようになりました。

もちろん「ラグラン-UB」も、そのニーズにあわせて使用用途が広がっていきました。しかし、用途が広がるとともに問題もでてきたのです。その問題は、あるフォントサイズ以下では「ラグランは潰れやすい」ということでした。フォントメーカーとして、この問題をクリアすることで、個性的な極太フォントをもっと快適に使っていただきたいと考えた結果、改良を加え、2011年に誕生したのが「ラグランパンチ-UB」です。 
「ラグランパンチ-UB」は、時代にあわせてリファインされた書体なのです。 

「ラグランパンチ-UB」は、「ラグラン-UB」よりもさらに文字面を大きくデザインし、白抜き部分の穴(パンチ)の大きさを広げ、線の交差する接触部や平行な線の隙間を広げることで、極太なインパクトをそのままに、見出しサイズでも文字の潰れが少ない使いやすい書体になっています。

「ラグランパンチ」をさらに特徴的に画にのせることで生まれるインパクト

アニメ「キルラキル」において、インパクトが強い「ラグランパンチ」をさらに特徴的に使用していただいています。

監督 今石 洋之氏のアニメ作品における書体の役割について思うこと

アニメにおける書体の役割というのは、単純に文字で情報を補足する(意味や読みなど)だけでなく、絵としても成立して、画面の演出、雰囲気作りに貢献できることだと思っています。
今回、「キルラキル」においては、まずシナリオの段階から、文字遊びの要素が強いことがわかっていたので、重要なセリフはテロップで読ませる必要があったことと、作画以外の部分で作品全体を通してアイコンになるような表現が欲しいなと感じていました。そこで 画面いっぱいに広がって下の絵が見えなくなる位、押し出しの強い文字を想定していたので、その意図に最も近いものとして「ラグランパンチ」という書体を選定しました。
今回の演出方法として採用した方法ですが、文字がキャラクターにかぶって見えなかったり、漢字についているルビを極小にしたりしています。“読めなくてもいい、読むこと以上にインパクトを重視する”というのが今回のスタイルです。 

また、今回は、「ラグランパンチ」をそのまま使用するのではなく、「キルラキル」のアナログ感を出せるように、エッジを荒らす処理を加えています。
書体と上手くアニメを融合させたことで、新しさや斬新さを演出できました。