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第22回 株式会社アンシブルタイトル 様

2012.01.17
株式会社アンシブルタイトルは、多数の映画・予告編のタイトル作成を行うポストプロダクションです。

代表の津田さんは、デジタルになる前のフィルム時代から、カメラを使ってのアニメーションや特撮合成用素材の撮影、タイトル作成など約30年映画業界で活躍されています。2006年に設立したアンシブルタイトルは、その映画に関わるいくつもの仕事の中から、字幕やエンドロールなどのタイトルに特化した専門の会社です。

今回は、字幕による「文字の演出」で、映画をより魅力的かつ効果的に彩られる津田さんから、字幕制作を通してのフォントの使い方をお伺いしました。

字幕テロップの作り方

映画の字幕といえば、外国映画に日本語の翻訳を付けたものを想像されると思いますが、セリフの日本語訳をそのまま表示する訳じゃないんですよ。もちろん、最初は直訳したものからですが、映画のシーンや表示時間にあわせてセリフは調整されます。つまり字幕用の特別翻訳ですね。これは画面に一度に表示することができる文字数が決まっているため、映像を見て分かる部分や、省略できるところを分かりやすい表現に調整をします。 

そうして出来た字幕専用の翻訳を表示時間を記した資料をもとにして、画面に合わせていきます。アンシブルタイトルではAdobe Illustratorを使用して文字表示やレイアウトを完成させ、画像編集ソフトで映画用タイトルにします。Adobe Illustratorを使用する理由は、書体が一番扱いやすく、画面に起こしやすいのもありますし、文字詰めの調整などが簡単にできますからね。

「監督の思い」と「映画の内容」で字幕の書体を選びます

字幕やエンドロールの書体を選ぶときは、プロデューサーや監督と直接会って話をします。文字に対してどのような考えを持っているかを何となく把握した上で、書体の提案をしていきたいと思っていますので…。こだわりのある監督だと、“かわいらしい書体”や“格調高い書体”または、具体的な書体名で指定をいただくこともあります。 

また、書体に関しては、まったくわからないと言われる監督もいらっしゃるので、その時は雑誌の切り抜き、過去のポスター等ありとあらゆる書類を持っていき、映画のワンシーンに合うよう話し合いをしたり、自分なりに映画を見てイメージに合うものを提案したりする場合があります。監督によって千差万別ですね。

文字の演出には書体それぞれのデザインを考えて

現在手掛けている邦画作品ですが、主人公が外国の方と交流するシーンがあり、その場面にも字幕をつける作業があります。この作品には、最近のお気に入りの書体[筑紫A丸ゴシック]を使っているんですよ。この[筑紫A丸ゴシック]は、トラッキングを“マイナス50”に設定して使用しています。これはベタで組むと文字間が開き気味になってしまい、ひとつの単語や文章として画面上捉えにくくなってしまうためです。本当はもう少し詰めたいところなのですが、それではこの文字の持つデザインが生きないと思うのです。書体それぞれの特長を考えながらキレイに表示させたいですからね。 

人は無意識のうちに文字と文字の間隔が開いていると文字の空きを読んでしまうんですよ。短い表示時間の中で意味のない文字間の空きが気になってしまうと映画の内容に集中できないですよね。また逆に、シーンによっては半角なり全角なりのスペースをとって、意図的に空きを読ませることもあるんです。つまり、そういう意味では字幕を作る仕事も、その映画により効果的な文字での演出をしていると言えますね。ラストのエンドロールでもリズムよく並べることにより、観ている方が飽きないように工夫しています。

新しいフォントはいち早く使いたい

『フォントワークスLETS』で毎年新しい書体が増えるのは、本当に楽しみですね。私だけでなく、映画監督と書体を決めていく際にも選択肢が多い方が喜ばれます。新書体が出たら比較的早く使っているほうだと思います。まだあまり人が使ってないフォントを使っていきたいですからね。だから『フォントワークスLETS』はもちろん、『イワタLETS』などの各『LETS』もリリースされて早いうちに始めましたよ。

さすがにニューシネマフォントは使い勝手がいい!

最近はいくつかのメーカーから字幕用の書体が出てきましたよね。それでもやっぱり一番支持されているのは佐藤英夫さんの[ニューシネマ]だと思います。私はこの[ニューシネマ]が『LETS』に入る前から、佐藤さんをはじめ手書きの字幕書体を邦画作品やCM等でも何度となく使用してきましたので『フォントワークスLETS』に加わったときは正直驚きましたし、やっと気兼ねなく映画に使用することができると思いましたよ。映画の字幕って言うのはもともと文字詰めして表示させるもので、詰める作業に時間が掛かるのだけど、映画字幕用につくられた[ニューシネマ]はさすがに大ベテランが作っているだけあります。さすが本物ですね!何もせずにセリフを入れ込むだけでしっかり詰まっていてきれいに見えます。使い勝手が他の字幕書体と違って非常に良く、ずいぶん作業時間を減らせます。それに、映画を観る方にしたって、2時間も文章を読むのはきついですよね。その点、読み手にもストレスが掛かりにくいようにデザインされていると思います。

安心して好きな書体を使えます

『LETS』を使い始める前は、書体の使用許諾について正直不安しかありませんでした。きちんとパッケージを購入して使っているのに、どこまで許諾されているか分からないことがたくさんありましたから…。注意書きを読んでも、使用許諾が曖昧にしか表記されていなかったので、ひとつひとつ問い合わせをしないといけませんでした。当時は、映画の予告編にしか使わないようなものにも制作物毎にロイヤリティーを支払っていましたよ。 

それが『LETS』の豊富な書体の中から好みのデザインを使える上に、使用許諾までも明確になっているためとても助かりました。完成した作品の多くは、DVDなどの別メディアでさらに多くの人の目に触れるようになると、私の手を離れ別の人が権利関係の管理をするようになります。そのため、完成した作品に関して迷惑を掛けられませんから、DVD化や映像コンテンツの二次使用をするなどしても許諾されている自由度が高い書体でないと仕事をすることができません。「この書体は使ってもいいの?」と制作スタッフと話すことがありますが、少しでもあやふやな書体は使わないことにしています。権利関係にあまり詳しくないからこそ、これを使っていれば安心だって思えるのが『LETS』です。宣伝という訳ではないですが、許諾がクリアになっていて安心だと行く先々で言っています。そのせいか、最近はよくTVでも見かけますね。

テロップ明朝みたいなのがもっとあると助かりますね

『フォントワークスLETS』の中には、放送業界向けに特殊な処理を行ったフォント[テロップ明朝]がありますよね。映画の字幕やエンドロールに[明朝体]を使いたいとリクエストがあれば、一番に提案するのがその[テロップ明朝]です。[テロップ明朝]は、画面上で横線や曲線がくっきり見えるように[筑紫明朝]をデザインされたもので、まさに映画にはもってこいの格調高い書体で大助かりです。字幕には基本的に均等な太さのフォントが良いので、横線の太い[明朝体]がもっとあると助かります。[マティス]にもこのような横線を太くするなどの処理をしたフォントがあればうれしいです。 

もっと言うと[テロップ明朝]ばかりだと真面目すぎてしまいますから、子どもや若い女性向けに横線のしっかりしたかわいらしいフォントも欲しいですね。 

<編集後記>
字幕・エンドロールの書体選定方法や、書体の特長を捉えての文字詰めなどを通して、テロップの制作過程をお伺いしました。制作が完了した後も複雑な権利関係がある業界で「文字の演出」を安心して行うことができるのは、書体のクオリティはもちろん、使用許諾が明確である必要性が高いことを再認識しました。映画やTVを含め、近年需要の多くなった電子媒体でも、より良いフォント環境を提供できるようにこれからも邁進して参ります。

企業情報

社名 株式会社アンシブルタイトル
所在地 東京都品川区東五反田2-3-10
TEL 03-5789-6938
FAX 03-5789-6939

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