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第37回 株式会社プラスタスデザイン 柴田 尚吾 様
~ 人気書籍のデザイナーをご紹介 ~

2014.11.19

デザイナー 柴田 尚吾 さまのご紹介

デザイン事務所での勤務時に、集英社『メンズノンノ』『BAILA』の広告ディレクションやデザイン、小学館『プラチナサライ』『駱駝』のエディトリアルデザインを担当。その後、フリーランスを経て、株式会社プラスタスデザインを設立。 紙媒体での経験を基盤とし、雑誌付録やCDジャケットのパッケージデザインなど、ジャンルを超えたさまざまな媒体への挑戦をされています。

今回は、話題を集めた「ONE PIECE展」の公式図録、パンフレットや、東京・大阪で行なわれていた「リアル脱出ゲーム」のWEB連動新システムで使用するゲームブック『死と砂の世界からの脱出』、そしてマンガ・エッセイ・対談などを綴った、さくらももこさんのオリジナルムック『さくらももこ編集長 おめでとう デビュー30周年記念』など、LETSフォントを使った多くの作例をご紹介いただきました。

独立をしたあとは、自然と筑紫書体を使うように

筑紫書体との出会いは、フリーランスになる前のデザイン事務所で、ある情報誌のエディトリアルデザインをしているときでした。その雑誌は、経済的に豊かな人や高い年齢層をターゲットとしていることから、読みやすさを考慮した高級感のある誌面にすることを出版社さんにリクエストされていたこともあり、制作の前段階でフォントディレクターとして活躍されている方にご意見を伺う機会があったのです。そこでご紹介いただいたのが「筑紫A見出ミン」と「筑紫明朝」でした。

タイトルロゴが筆系の書体を使っている雑誌なので、動きのあるデザインがキレイにマッチすると考え、表紙の一番目立つキャッチコピーに「筑紫A見出ミン」を使用しました。また、本文にも同じ筑紫シリーズである「筑紫明朝」を採用しています。この本文では、読みやすさへの対応として文字サイズを大きめに設定する必要があったのですが、文字サイズを大きくすることでの誌面イメージも変わることなく、高級感を持たせたまま、読みやすくてキレイにまとめられたと思っています。 これはやはり、正方形に押し込められた感じのするデザインとは違って、良い意味で癖があるというか、動きの感じられるエレメントが関係しているのだと思います。

こうやって筑紫書体をいろいろな所に使って行くうちに、“ここは明朝体で組みたいな”と思ったときには一番最初に「筑紫書体」で作ってみたらどうかと考えるようになりました。

異なるコンセプトの「ONE PIECE展」公式図録と 公式パンフレットにも筑紫書体を

これは、東京と大阪で行なわれた「ONE PIECE展」の公式図録『記憶』と公式パンフレット『体感』です。それぞれのコンセプトに沿って制作を行ないました。

『体感』は、作者の尾田 栄一郎さんの“子どもに喜んでもらいたい!”という意向から、コンセプトを“お得感”として、価格を抑える造本設計と、誌面では大量の写真とイラストを使用しました。

もう一方の『記憶』では、コレクション本としてずっと大切にしてもらえることをコンセプトに、編集者さんからリクエストされた“マンガやアート、そのどちらにも偏らない間(あいだ)”を目指してデザインしています。
 

こちらには『体感』同様にマンガ部分もありますが、展示物である等身大の「ONE PIECE」キャラクターや、厳選された原画などの写真やイラストが満載です。そのため、図録内のフォントにはコレクション本に相応しい“統一感”や“贅沢さ”を取り入れることができる「筑紫書体」を使用しました。 伸びやかなエレメントを持つ「筑紫書体」は、見出しや小見出し部分の「筑紫A見出ミン」だけでなく、対談を掲載している英文のページにも「筑紫Aオールド明朝」を本文に使っています。
また、この「筑紫Aオールド明朝」は、ウエイトバリエーションの多さにも使い勝手の良さを感じています。 例えば、長文の和文テキストに「筑紫Aオールド明朝-M」を使っているときの英数字を、1つウエイトの細い「筑紫Aオールド明朝-R」にするなど、見ため上のテキスト濃度が均一になるような調整をするときです。

和文や欧文のテキストの並びや、割合にも寄りますが、ほとんどのフォントは、英数字が若干太めに見えてしまうんですね。

そのため調整を加えるのですが、デザインには制作側とそれを受け取る読者側に距離感があることもあります。凝りすぎてしまうと、少々やりすぎだと感じられてしまうため、なぜそのように感じるのか、どのくらいの雰囲気作りが心地よいのかを研究しながらデザインすることを心がけることで、手元において眺めておきたいと思ってもらえる“統一感のある一冊”になったのではないかと思っています。

沢山のフォントを使った『さくらももこ編集長 おめでとう』ムック

さくらももこさんのオリジナルムックは、表紙を見ていただいてもわかるように、沢山の書体が使われています。お話しごとに見え方やフォントが異なるので、それぞれのデザインから、それぞれのイメージが感じられる1冊になっていると思います。

実際にどのくらいの書体数を使ったかは覚えていませんが、入稿する印刷会社さんには「LETSのOpenTypeフォントを全部使うと思っててください!」って伝えたくらいです。

書体見本でもない1冊に、ここまで沢山のフォントを使うことは、私としても初めてのことでした。ただ、クライアントであるさくらプロダクションさまから、数多くの企画内容を“可能な限り明確に区切って、各企画の特色を出してほしい”とリクエストをいただいたこと、また、原稿ありきでレイアウト全体の構成を考えられたことから、このように書体を多用する方法で、特徴というか、それぞれの企画に性格がでるような見せ方で工夫してみようということになりました。
原稿内容を元に、レイアウト調整にとりかかれたことから、ラフの提出時にはその内容に沿ったフォントを提案することができました。そのフォント選定の中でも、受け取る側である読者の反応が一番楽しみな書体は、「筑紫Cオールド明朝」でした。
この書体、“金魚っぽくていいんじゃないかな”と思ってラフを提出したのですが、実は少しだけ不安があったんです。リリースされたばかりだということもあり、私自身が使い慣れていなかったということ、また、本文に使うには少し踊りぎみな書体だと感じていたためです。 ですが、編集社さんやクライアントさんにラフを上げた段階で「どうしてこの文字はこんなに動いてるの?」っておもしろいリアクションをいただいたんです。使用したフォントのデザインについて、編集の方にリアクションや感想をいただくことはあまりないのですが、だからこそこの書体でいける!という手応えを掴めました。

今回のように写真上に、白抜きの文字をそのままのウエイトで配置するには、ハライの部分が見えにくく、掠れてしまうリスクが高かったので、苦肉の策ではありましたが、少しウエイトを太める調整をしました。 一律に太くなってしまいますが、ラフ段階で提出した“動いた”感じをそのまま表現できていたため「おもしろいね!」って喜んでいただけました。自分でも不思議な感じがしながら本文に使用したこの書体も、誌面を見ている方には面白く感じられ、気になる書体なんだなと、改めて制作側と受け取る側の感覚について学ぶ機会となりました。
この他にも、エッセイとして「たまちゃんのお父さんのカメラ」というお話しがあります。内容が明確になっているからには、どストライクなイメージにしたい!見ためから読者にイメージが伝わるようにしたい!と思い、すぐに浮かんだのがこの「ニューシネマB」です。

この書体は“空気穴あき”といって映画字幕特有のデザインが施されています。その特徴が伝わりやすいように、他のページよりも本文の級数を大きめに設定することで、この章で紹介されているカメラのような、レトロな雰囲気を出すことができたと思っています。
また、「あとがき」部分には、さくらさん直筆の生原稿を撮影して使うことも考えましたが、やはり撮影用にいただいたものではないことから、ペンでサラサラと書いた雰囲気のあるフォント「花風ペン字体」を使い、作文用紙風の紙にフォントを入れ込んで、手書き感を演出することにしました。

こういった雰囲気づくりに書体選びは欠かせないですね。手書き感のある誌面にすることで、さらに気持ちが相手に伝わるようになるのではないかと思います。

「思ったよりも沢山は書けなかった」というさくらさんに、絵柄とまではいかないけれど、フォントのデザインを使って少しでもサポートできるようにと思って作りました。 もちろん、書体の選定には作家さんごとの作風やイメージにも関わってくると思っていますので、お会いしながら、密にやり取りができたからこそ完成した1冊だと思っています。

『DEATH NOTE × SCRAP 死と砂の世界からの脱出』では 怖い感じを演出

表紙のタイトル「死と砂の世界からの脱出」に「筑紫Aオールド明朝」を、本文の「DEATH NOTE」に登場する死神の会話部分には「コミックミステリ」を、問題の出題部分には「万葉古印ラージ」を使用しました。

「コミックミステリ」は、1文字ずつのデザインが、抑揚というか、揺らいだ感じであることから、不安感とかおどろおどろしい雰囲気が感じられ、“死神が話す声ってこんな感じかな”と考えたイメージにピッタリだったんです。
目から入る情報って印象に残るんですね。後々気づいたのですが、同じフォントが、似たようなシチュエーションで週刊雑誌のマンガにも使われていました。このフォントは、デザイン性が強いということもあり、制作側も受け取る側も同じような印象を持ちやすいのかもしれませんね。

こちらからどんどん提案できるような人になりたいです

情報というのは、ただ文章を追って理解するものじゃなくて、文字のデザインからも伝わってくるものがあると思っています。そうじゃないと歴史上、こんなにいろいろなデザインの書体って出てこないと思います。

何か理由があって、研究し、TPOにあわせたデザインが出てきたのだと思うし、ネットを使う機会が増えてきたこれからも、それにあうように新たなフォントや組版って出てくると思います。そうすると、ネットでのテキスト表示に慣れた若い世代のユーザー側の目も肥えていって、感覚的にだと思いますが「これってキレイじゃない?」とか「かっこいいね」とか、そういった形容詞でデザインが表現されることが多くなってくると思うんです。
そうなったときのデザインのあり方って、もともとの商品にプラスの効果が加わって、今まで以上に趣味品としてとっておきたい、所有しておきたいものの対象になると思います。例えば、好きな作家さんの本はハードカバーで読みたいとかいう感じですね。 そこに同じようなデザインが並んでしまうと面白みがないと思うんです。作品によっていろいろ見え方があるほうが良い。そうかと言って、変わり過ぎや、やりすぎるとまた違うような感じます。

そうなったときに、個性とか色気とかを作品ごとの世界に合わせたり、わざとこうやってるんだっていうデザインを取り入れるのも大切だと思います。 いろんな表現の仕方があると思うので、ちょっとしたところのフォントの使い方についても、こちらからこうやった方がいいねって言えるような人になりたいと思っています。

そのためにも筑紫シリーズはずっとリリースし続けていってください。沢山の書体が使える「LETS」は、全てのユーザーさんが同時に最新のフォントを使えることから、使用する媒体やタイミングって重要だと感じています。その様な中でも、見る人から「ひと味ちがうね」て思われるようなデザインを目指していければと思います。
<編集後記>
取材に伺った際にも、新しく装幀されている単行本に、複数の筑紫書体が使われているのを見せていただきました。受け手となる側に、どのような印象や感じ方を残せるのか、書体開発側からもリリース時の情報や作例掲載を通して伝えていきたいと思います。

企業情報

社名 株式会社プラスタスデザイン
柴田 尚吾 様
所在地 東京都千代田区神田神保町2-14
朝日神保町プラザ1203号
TEL 03-6268-9980
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